公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン(改訂版)の省略版です、交渉事項にお役立てください。

公共交通機関の旅客施設に関する
移動等円滑化整備ガイドライン(改訂版)

?移動等円滑化された経路
考え方
経路については、高齢者、障害者等の移動等円滑化に配慮し、可能な限り単独で、駅前広場や公共用通路など旅
客施設の外部から旅客施設内へアプローチし、車両等にスムーズに乗降できるよう、すべての行程において連続
性のある移動動線の確保に努めることが必要である。旅客移動について最も一般的な経路(主動線)を移動等円
滑化するとともに、主動線が利用できない非常時も勘案し、移動等円滑化された経路(以下「移動等円滑化経路
」という。)を複数確保することが望ましい。

移動等円滑化基準
(移動等円滑化された経路)
第4条 公共用通路(旅客施設の営業時間内において常時一般交通の用に供されている一般交通用施設であって
、旅客施設の外部にあるものをいう。以下同じ。)と車両等の乗降口との間の経路であって、高齢者、障害者等
の円滑な通行に適するもの(以下「移動等円滑化された経路」という。)を、乗降場ごとに一以上設けなければ
ならない。
2 移動等円滑化された経路において床面に高低差がある場合は、傾斜路又はエレベーターを設けなければなら
ない。ただし、構造上の理由により傾斜路又はエレベーターを設置することが困難である場合は、エスカレータ
ー(構造上の理由によりエスカレーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター以外の昇降機であ
って車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のもの)をもってこれに代えることができる。
3 旅客施設に隣接しており、かつ、旅客施設と一体的に利用される他の施設の傾斜路(第六項の基準に適合す
るものに限る。)又はエレベーター(第七項の基準に適合するものに限る。)を利用することにより高齢者、障
害者等が旅客施設の営業時間内において常時公共用通路と車両等の乗降口との間の移動を円滑に行うことができ
る場合は、前項の規定によらないことができる。管理上の理由により昇降機を設置することが困難である場合も
、また同様とする。

◎高齢者、障害者等が容易に開閉して通過できる構造のもの(自動式の引き戸等)とする。
○自動開閉装置を設ける場合は、車椅子使用者や視覚障害者の利用を考慮し、押しボタン式を避け、感知式とす
る等開閉操作の不要なものとする。また、戸の開閉速度を、高齢者、障害者等が使いやすいよう設定する(開閉
速度は、開くときはある程度速く、閉じるときは遅いほうがよい)。ただし、人通りが多い場合はこの限りでな
い。
◇構造上やむを得ない場合以外は開き戸としないことが望ましい。また、手動式の引き戸の場合は、フリースト
ップ機能がついた半自動式にすると利便性が向上する。
◇手動式扉に握り手を設ける場合は、高齢者・障害者等に使いやすい形状とするとともに、周囲の部分との色の
明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービジョン者の操作性に配慮したもの
とすることが望ましい。

*:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性
を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行
うこととした。

○高齢者やロービジョン者の移動等円滑化に配慮し、充分な明るさを確保するよう、採光や照明に配慮する。

*:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性
を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行
うこととした。

参考1-7:移動等円滑化された経路を構成する通路の例

(コラム)床面、壁面への配慮事項
・ロービジョン者は視覚障害者誘導用ブロックを凹凸だけでなく明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト)
によっても認識しているため、視覚障害者誘導用ブロックの周囲に視覚障害者誘導用ブロックと誤認するような
床面装飾模様を施さない配慮が必要。
・誘導動線と直交するような縞状の模様や床色の塗り分けがあると、ロービジョン者は段差と誤認することがあ
るため、床面の塗色等の際には配慮が必要。
・床面と壁面が同色であるとロービジョン者は通路の縁端が視認できないことがあるため、床面と壁面の下部又
は全体の輝度コントラストを確保することにより通路の縁端が明確に認識できるようにする配慮が必要。

・ロービジョン者の空間視認性を確保するためには十分な明るさが必要となるが、障害の疾患等によって、照度
が低いと「暗すぎて見にくい」レベル、逆に照度が高すぎるために「明るすぎて見にくい」レベルが異なる。ま
た、床面色・壁面色などによりまぶしさや視認性も変化する。今後、ロービジョン者や高齢者の見にくさに応じ
た適正照度に関する研究が進むことが望まれる。
(参考:岩田三千子「視認における輝度対比と適正照度の関係」−社団法人照明学会「ロービジョンを対象とし
た視環境計画に関する研究調査委員会報告書」2006年9月)

参考1-14:照明計画による空間把握・視認性の向上例

*:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性
を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行
うこととした。

は全体の輝度コントラストを確保する等により床の端が明確に認識できるようにする配慮が必要。

?階段
考え方
階段は、移動時に最も負担を感じる箇所であるため、特に高齢者や杖使用者等の肢体不自由者視覚障害者の円
滑な利用に配慮する必要がある。特に手すりの高さや階段の滑りにくさ等について配慮が必要であるが、これら
はすべての利用者にとっても効果的である。

移動等円滑化基準

)を大きくすることにより、段を容易に識別できるものとする。
○踏面の端部(段鼻部)は、全長にわたって十分な太さ(幅5cm程度)とする。
○踏面の端部(段鼻部)の色は始まりの段から終わりの段まで統一された色とする。
○この識別部分は、汚損・損傷しにくいものを用いる。


○高齢者やロービジョン者等の移動を円滑にするため、十分な明るさを確保するよう採光や照明に配慮する。

階段下
視覚障害者が白杖で感知できずに衝突してしまうことがないよう、階段下に十分な高さ(200cm程度の範囲内
)のない空間を設けない。やむを得ず十分な高さのない空間を設ける場合は、高さ110cm以上の柵の設置やそれ
に代わる進入防止措置を講ずる。この場合、床面からの立ち上がり部に隙間を設けず、白杖で容易に柵等を感知
できるよう配慮する。

*:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性
を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行
うこととした。

(コラム)階段、側壁への配慮事項
・階段と側壁が同色であるとロービジョン者は階段の縁端が視認できないことがあるため、階段と側壁の下部又
は全体の輝度コントラストを確保することにより床の端が明確に認識できるようにする配慮が必要。




◇表示画面の配色については、参考:2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色覚異常の利用者に配慮
することが望ましい。

音声等
◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターのかご内に、かごの到着する階並びにかご及び昇降路の出入
口の戸の閉鎖を音声で知らせる設備を設ける。
◇到着階に何があるか(地上出口、改札口等)具体的に音声案内することが望ましい。
○スルー型エレベーターの場合は、開閉する側の戸を音声で知らせることとする。その際、視覚障害者に配慮し
た案内内容とする。

操作盤
ボタン
◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターには、かご及び昇降路の出入口の戸の開扉時間を延長する機
能を有したものとする。
○操作盤のボタンは、指の動きが不自由な利用者も操作できるような押しボタン式とし、静電式タッチボタンは
避ける。
○音と光で視覚障害者や聴覚障害者にもボタンを押したことが分かるものとする。
◇かご内に設ける操作盤は、視覚障害者で点字が読めない人もボタンの識別ができるよう階の数字等を浮き出さ
せること等により分かりやすいものとすることが望ましい。
◇ボタンの文字は、周囲との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)が大きいこと等によりロービ
ジョン者の操作性に配慮したものであることが望ましい。

◎移動等円滑化された経路を構成するエレベーターの乗降ロビーには、到着するかごの昇降方向を音声で知らせ
る設備を設ける。ただし、かご内にかご及び昇降路の出入口の戸が開いた時にかごの昇降方向を音声により知ら
せる設備が設けられている場合又は当該エレベーターの停止する階が2のみである場合は、この限りでない。


*:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性
を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行
うこととした。

・エレベーターの開扉方向の案内放送は、「乗り口と反対側」など、乗った位置を元にした具体的な文章表現と
し、「こちら側」などの音声案内装置の位置を基にした抽象的な文章表現を避ける。
・直角方向のエレベーターの開扉方向の案内放送は、「乗り口から見て右側」など、乗った位置を基にした具体
的な文章表現とする。
・文章表現は誰でもわかりやすい平易なものとする。
■タイミング
・エレベーターの開扉方向の案内放送は、できるだけ乗った時と降りる時両方に案内をする。
・乗った時と降りる時両方の案内が難しい場合は、乗った時に案内をする。
<停止する階が3つである場合>

第7条 エスカレーターには、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を音声により知らせる設備を設けなけ
ればならない。

ガイドライン
◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容

方向
◎移動等円滑化された経路を構成するエスカレーターには、上り専用と下り専用をそれぞれ設ける。ただし、旅
客が同時に双方向に移動することがない場合については、この限りでない。


エスカレーターへの進入可否表示の配色については、参考2-5を参考とした色使い、色の組み合わせとし、色
覚異常の利用者に配慮する。
エスカレーターのベルトに、しるしをつけることにより、進行方向がわかるようにすることが望ましい。

音声案内
◎進入可能なエスカレーターの乗り口端部において、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を知らせる音声
案内装置を設置する。
○音声案内装置の設置にあたっては、周囲の暗騒音と比較して十分聞き取りやすい音量、音質とすることに留意
し、音源を乗り口に近く、利用者の動線に向かって設置する。
(設置の考え方、具体的な音声案内例は2.?「視覚障害者誘導用案内設備」を参照)


参考1-31:エスカレーターの例
参考1-32:エスカレーター進入可否表示の例
○床面及び乗り口ポールの低い位置においてエスカレーターへの進入可否を表示。
※配色については、参考2-5を参照。
○点状ブロックは、点検蓋に接する程度の箇所に奥行き60cm程度で敷設。センサーがある場合はその手前に敷設
。横からの進入もある場合は横にも敷設。

(コラム)
エスカレーターでの歩行への注意喚起
エスカレーター内で歩行している利用者がいると、高齢者や片側に麻痺がある人、視覚障害者、子連れや介助
者を伴っている利用者等にとって、危険を伴うことがあるとともに、思わぬ事故を誘発することもありうる。す
べての利用者が安全にエスカレーターを利用するために、十分な注意喚起を促すことが望まれる。そのための案
内や掲示が必要である。

エスカレーターの上りと下りの判別に男女の声
エスカレーターの上下方向を案内する際に、一部の事業者で見られるような、男女の声を分けて音声案内する
など、分かりやすい工夫が必要である。

参考1-33:エスカレーターへの誤進入防止の例
エスカレーターの稼動方向がわかる手すりの表示例
  手すりへの案内表示により、上下の稼動方向が視認しやすくなっている。

参考1-34:踏み段の識別に関する例
◇四方を縁取りすることで、踏み段の範囲を視認しやすくしている例

2.誘導案内設備に関するガイドライン
?視覚表示設備
考え方
一般に、視力の低下は40〜50歳ぐらいからはじまり、60歳を超えると急激に低下する、車椅子使用者の視点は一
般歩行者よりおよそ40cmほど低い、聴覚障害者は耳から聞く情報は得られないことが多い、日本語のわからない
訪日外国人が多いなど、さまざまな利用者が情報コミュニケーションの制約を抱えている。

掲示位置については、ロービジョン者等に配慮して、可能な限り、接近できる位置、視点の高さに配置する。
○安全色に関する色彩は、別表2-1に示すJIS Z9103:2005による。出口に関する表示は、別表2-1に示すJIS Z910
3:2005により黄色とする。
○高齢者に多い白内障に配慮して、青と黒、黄と白の色彩組み合わせは用いない。
○サインの図色と地色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくすること等により容易に識別
できるものとする。
色覚異常の利用者に配慮し、参考2-5を参考とし見分けやすい色の組み合わせを用いて、表示要素毎の色の明
度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保した表示とする。
 留意すべき色の選択例:
・濃い赤を用いず朱色やオレンジに近い赤を用いる。赤を用いる場合は他の色との境目に細い白線を入れると表
示が目立ちやすくなる。
 見分けにくい色の組み合わせ例:
・「赤と黒」、「赤と緑」、「緑と茶色」、「黄緑と黄色」、「紫と青」、「赤と茶色」、「水色とピンク」の
見分けが困難
・輝度コントラストには敏感であり、同系色の明暗の識別に支障は少ない。
また、路線、車両種別等を色により表示する場合には、文字を併記する等色だけに頼らない表示方法にも配慮す
る。
◇サインは、必要な輝度が得られる器具とすることが望ましい。さらに、近くから視認するサインは、まぶしさ
を感じにくい器具とすることが望ましい。
◎エレベーターその他の昇降機、傾斜路、便所、乗車券等販売所、待合所、案内所若しくは休憩設備(以下「移
動等円滑化のための主要な設備」という。)又は公共用通路に直接通ずる出入口の付近に設けられる、移動等円
滑化のための主要な設備の配置を表示した案内板その他の設備の付近には、これらの設備があることを表示する
標識を設けなければならない。ただし、移動等円滑化のための主要な設備の配置を容易に視認できる場合は、こ
の限りでない。

◇外光、照明の逆光や光の反射により、見にくくならないよう配慮することが望ましい。また、サインの背景に
照明や看板等が位置すること等により、見にくくならないように配慮することが望ましい。

乗換経路等誘導時の配慮
○他の事業者や他の公共交通機関への乗り換え経路への誘導にあたっては、エレベーターを利用した経路もわか
りやすく表示する。
◇隣接する他社線、公共空間とは連続的に案内サインが繰り返し配置されることが望ましい。この場合、サイン
計画にあたっては、施設設置管理者間で協議調整の上、表示する情報内容を統一し、案内サインがとぎれないよ
う留意すること。また、関係者が多岐にわたる等の場合においては、協議会等を設置して検討する。

●誘導サイン・位置サイン

○上述の情報内容は、あわせてアナウンスにて、聞き取りやすい音量、音質、速さで繰り返す等して放送する。


*:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性
を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行
うこととした。

・遠距離視認用の大きな文字を壁付型などで視点の高さに掲出すれば、ロービジョン者にとっては接近視できる
ので読みやすい。
・なお文字高とは、日本字では指定書体の「木」の高さを、アルファベットでは指定書体の「E」の高さをいう。

参考2-4:図色と地色の明度対比例
・サインの図色と地色に、下図に示す程度の明度対比を確保すると、容易に識別しやすい。

参考2-5:色覚異常の人の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ
〜大多数を占める赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)の特徴
・ 赤?緑の波長域において、明度が類似した色の見分けが困難になっている。次図の、黒い実線から右(長波長)
側の「赤?緑の領域」で、色の差が小さくなっている。この範囲では点線を中心に左右の色がほぼ対称に見えて
いて、「赤と緑」「黄緑と黄色」の差が特に小さくなっている。
・ さらに1型色覚では、最も長波長側の視物質に変異があるため、赤が暗く感じられる。そのため「濃い赤」は
ほとんど「黒」に見える(ロービジョン者も同じ傾向がある。)。黒背景に赤い文字の電光掲示はほとんど読み
取れず、また注意標示や時刻表などの赤が黒と同じに見えてしまう(交通信号機ではこの問題を避けるため、赤
信号にはオレンジに近い色を使用している。)。
・ ある色と、それにRGBの赤成分または緑成分を足した色が区別しにくくなる。「紫と青」「緑と茶色」「赤と
茶色」などそれぞれの色が同じようにみえてしまう。
・ 彩度の低い色どうしも識別が難しく、「水色とピンク」「灰色と淡い水色、淡いピンク、薄緑」などがそれ
ぞれ同じように見える。
・ 鮮やかな蛍光色どうしの見分けも苦手で、黄色と黄緑の蛍光ペンや、ピンクと水色の蛍光ペンは、それぞれ
ほとんど同じ色に見える。
・ 赤と緑の一方の視物質がない分、色の識別において青視物質に依存する度合いが高いため、青色への感度は
むしろ高い面がある。「赤と緑」や「黄色と黄緑」はほとんど同じ色に見えるが、「緑と青緑」は全然違う色に
見える(交通信号機ではこれを利用して、緑の信号には青味の強い色を使用している。)。
・ 色相(色あい)の見分けが苦手な分、明度や彩度の差にはむしろ敏感であり、同系色の明暗の識別には支障
は少ない。
・ ある程度の色は区別できるため、区別できないところにさらに色分けがあるとは考えない傾向がある。その
ため色分けがされていること自体に気付かないことがある。
・ 一般の人の色覚に合わせて作られた「色名」(色のカテゴリー)に、色覚異常の人はうまく対応できない。
そのため、色名が明記されていないと、たとえ色が違うことが分かってもそれぞれの色名が分からず、色名を使
ったコミュニケーションが困難になる(これに対応して、近年の国産文房具ではペン軸に色名を明記しているも
のが増えている。)。
色覚異常の人が見分けづらい色の組み合わせは、xy色度図の上でほぼ一直線に並ぶ。この線を混同線という
。路線図など多くの色を使用する場合も、それぞれの色の範囲内で混同線に乗らないように色合いを微調整し、
明度にも差をつけることによって、色覚異常の人にも区別がしやすくなる(色覚シミュレーションソフトを使う
と、同じ混同線に乗る色が1つの色に表示されるので、見分けづらい組み合わせを確認できる。)。

(コラム)「色覚異常の人の色の見え方と区別の困難な色の組み合わせ」の一例
(大多数を占める赤緑色覚異常(1型色覚、2型色覚)の場合の例)
背景の色と文字やサインの色について
■ 黒の背景の場合
・黒背景の上に重要な情報が赤字で表示されていてもその部分は黒く見えてしまい識別できない場合があるので
、オレンジに近い赤や、黄色やオレンジを用いると視認しやすくなる。赤を用いる場合には、他の色との境目に
細い白線を入れると視認しやすくなる。
・ LED表示は黒背景となるので、赤よりもオレンジ等を用いると視認しやすくなる。
白内障の人は青が暗く見える場合があるため、黒背景の上には青よりも水色を用いると視認しやすくなる。
■ 色付きの背景の場合
・ 濃色の背景の上に別の色で文字やサインを表示すると、色覚異常の人は明度や彩度の差には敏感なので、同
系色の濃淡で文字やサインを表示しても視認できる。

文字やサインの表示要素ごとの見分けにくい色の組み合わせについて
■ 赤と黒
・黒と対比させる場合はなるべくオレンジか、オレンジに近い赤を用いると視認しやすくなる。
・ 注意書きの文章や案内地図の現在位置表示等を赤で表示する場合は、下線を引く又は反転文字により示すと
いったように、色だけでなく形状でも変化をつけると視認しやすくなる。
・ 禁煙、立入禁止等の警告サインは、赤と黒が接するところに細い白縁を入れると視認しやすくなる。
■ 赤と緑
・ この組み合わせは識別できない場合があるので、赤と青、もしくは赤と水色を用いると視認しやすくなる。
やむを得ず緑を使う場合は、緑ではなく青緑を用いると視認しやすくなる(緊急避難の経路図、トイレの空き・
使用中の表示、扉の開・閉、エスカレーター等の進入可・不可、タクシーの空車・乗車など。)。
・ 色だけでなく、「空き・使用中」などの文字表示や、「○」「×」「↑」などの記号を用いると視認しやす
くなる。
・ 表示ランプ等で赤と緑のランプが切り替わるものは識別できない場合があるので、色を変えるのでなく「点
灯・消灯」や「点灯・点滅」の方が識別しやすくなる(携帯電話やデジタルカメラの充電状況の表示灯は「赤・
緑」から「点灯・消灯」に変更された。)。
■ ピンクと水色
・ この組み合わせは識別できない場合があるので、赤と青を用いると視認しやすくなる。水色を用いる場合は
、ピンクを赤紫(マゼンタ)に近い色にすると視認しやすくなる(トイレの男女を示すサインなど。)。
■ 黄色と明るい黄緑、オレンジと黄緑
・ この組み合わせは識別できない場合があるので、黄緑のかわりに青みの強い緑や、彩度の低いパステルカラ
ーを用いると視認しやすくなる(案内図の塗り分けなど。)。
■ 青と紫
・ この組合せは識別できない場合があるので、やむを得ず青を用いる場合には、赤みの強い赤紫(マゼンタ)
を用いると視認しやすくなる。
■ 茶色と赤、茶色と緑
・ この組合せは識別できない場合があるので、赤や緑の明度を大きく変えると視認しやすくなる(明るい緑と
焦げ茶色、濃い緑と淡く明るい茶色など。)。
■ 蛍光色
・ 蛍光色どうしを組み合わせると識別できない場合があるので、蛍光色とくすんだ色を組み合わせると視認し
やすくなる。
■ 電光表示の色
・ 光る色の識別は特に難しく、赤・橙・黄・黄緑・緑が全て同じ色に見える場合がある。色の違いによって識
別することが必要な場合は、これらのうちなるべく1色を用い、その他色覚異常の利用者にも識別しやすい青緑
・青・白等を組み合わせると視認しやすくなる。
■ 路線や列車種別、店舗の種類や施設のゾーン等を色で区別している場合
・ 見分けやすい色の組み合わせを選ぶことが望ましいが、従前より情報として用いてきた色を変更することが
難しい場合には、以下の配慮を行うことにより、視認しやすくなる。
?同じ色名で表現できる色の中で、色相、明度、彩度を微調整すると視認しやすくなる(色の微調整によって一
般の人への印象をあまり変えずに色覚異常の人への視認性を大きく向上できることがある。)。
?色のみに頼るのでなく、文字を併記する、○△×といった形状を変える、ハッチングや紋様を施す、斜体・下
線・枠囲み・明暗反転表記を併用することなど形状による識別を追加すると視認しやすくなる。

その他デザインについて
■ 色名の表記
・ 凡例等には、それぞれの色名を明記するとコミュニケーションがとりやすくなる。
■ 色面の境界
・ 色と色の境界には白または黒の細線で縁取りをすると、違う色で塗られていることが視認しやすくなる。
■ 色の面積等
・ 面積が広いほど色の違いが分かりやすくなるので、色付きの線は極力太くし、文字は極力太い書体を用いる
と視認しやすくなる。
・ 路線色によって車両等を色分けする場合には、なるべく太い帯状もしくは全体を色分けすると視認しやすく
なる。
・ 車両等は、他の一般車両と判別しやすい色に明確に塗られていると視認しやすくなる。
■ 色指定の統一
色覚異常の人は微妙な青みの違いや明度・彩度の違いにはむしろ敏感であるために、一般の人には大体同じ
ように感じられる色が、色覚異常の人には全然違う色に見える場合がある。従って、案内図、壁面・床面等のサ
イン、パンフレット等の印刷物等で、同じものを示す場合にはそれぞれの色を統一すると視認しやすくなる(色
を指定する場合は色名ではなく、カラーチップやCMYK値などで数値的に行うと統一できる。)。

なお、LED照明ではこれより低い輝度でまぶしく感じられることがあるため注意が必要。
・表示面輝度を得る方法に従ってサインの器具を分類すると、照明器具を内蔵した内照式、表示面の外側に照明
器具を付設した外照式、室内灯などの一般照明光源を利用した無灯式などに分かれる。
・視力が低下する高齢者等も考慮に入れると、一般的には、内照式は遠くから見る場合でも必要な輝度を確保し
やすいが、近くから見るとまぶしさを感じやすい。外照式はまぶしさを感じにくいが、遠くから見るのに必要な
輝度を確保するには内照式の場合より灯具を増やすなどの対策が必要になる。無灯式は採光がある場合は必要な
輝度を得やすいが、自然光がないときは一般照明に頼るので輝度不足になりやすい。


?視覚障害者誘導案内用設備

考え方
視覚障害者誘導用ブロックは、現時点では視覚障害者の誘導に最も有効な手段であり、旅客施設の平面計画等を
考慮し、歩行しやすいよう敷設することが有効である。敷設にあたっては、あらかじめ誘導動線を設定するとと
もに、誘導すべき箇所を明確化し、利用者動線が遠回りにならないよう配慮する必要がある。また、視覚障害
誘導用ブロックを感知しやすいよう、周囲の床材の仕上げにも配慮する必要がある。
視覚障害者の誘導手法としては、音声・音響による案内も有効である。

エスカレーター>
視覚障害者のエスカレーター利用にあたっては、位置や進入可否、行き先、上下方向の確認が困難となっている
。従って、単独でエスカレーターを利用している視覚障害者の円滑な移動を図るためには、進入可能なエスカレ
ーター(時間帯によって上下方向が変更されるエスカレーターや自動運転エスカレーターを含む)において、音
声により、その位置と行き先及び上下方向が分かることが必要である。また、逆方向のエスカレーターへの誤進
入を避けるため、進入不可能なエスカレーターにおいては、音声案内を行わないこととする。なお、注意喚起案
内を行っているエスカレーターについては、案内のタイミングが重ならないよう配慮することが必要である。
エスカレーターの音声案内については、視覚障害者が環境認知に音源定位を活用していること踏まえ、乗り口を
特定しやすいよう、乗り口に近い位置に音源を設置すべきである。また、音声案内を行う場合には、利用者と対
面する通路方向に指向性を持たせることが有効となる。

 エスカレーターには、当該エスカレーターの行き先及び昇降方向を音声により知らせる設備を設けなければな
らない。

※音声その他の方法とは、以下に示すような方法を示す。
・音響音声案内装置:音響または音声で設備等の位置・方向や車両等の運行・運航案内を示すもの


エスカレーター
エスカレーター前には、エスカレーター始終端部の点検蓋に接する箇所に奥行き60cm程度の点状ブロックを全
幅にわたって敷設する。

*:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性
を得るための周囲との見やすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行う
こととした。

■音声・音響案内
◎車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を音声により提供するための設備を設けなければならない。
○音声・音響案内を提供する場合、スピーカーを主要な移動経路に向けて流す。また、スピーカーから流す案内
の音量は、その移動経路の適切な地点から確認して、周囲の暗騒音と比較して十分聞き取りやすい大きさとする。
※「高齢者・障害者配慮設計指針−公共空間に設置する移動支援用音案内」は2013年度にJIS化される予定。

車両等の運行に関する案内
○車両等の発車番線、発車時刻、行先、経由、到着、通過等のアナウンスは、聞き取りやすい音量、音質、速さ
で繰り返す等して放送する。
○同一のプラットホーム上では異なる音声等で番線の違いがわかるようにする。


エスカレーターの行き先及び上下方向を知らせる音声案内装置を設置する。
○なお、音声案内装置の設置にあたっては、進入可能なエスカレーターの乗り口端部に設置し、周囲の暗騒音と
比較して十分聞き取りやすい音量、音質とすることに留意し、音源を乗り口に近く、利用者の動線に向かって設
置する。

音響計画
◇指向性スピーカー等の活用により、音声・音響案内の干渉・錯綜を避けた音響計画を実施することが望ましい。

参考2-20:改札口における音響案内の例
参考2-21:改札口における音響案内の標準例
「ピン・ポーン」またはこれに類似した音響
(具体的な音響づくりについては、参考2-29に示す「音案内を行う際の基礎知識」を参照)

参考2-22:エスカレーター内蔵スピーカーの例
エスカレーターに設置(内蔵)されたスピーカーは、対面方向に向かって音源が設置されている。
 (東京地下鉄東西線行徳駅

参考2-23:エスカレーターにおける音声案内の標準例
案内文設定の考え方
・案内内容は、行き先方向を端的に短く伝えることが望ましい。冗長な案内はかえって混乱を招くこととなる。
・乗車動線上であれば「ホーム方面行き」、降車動線上であれば「改札口方面行き」であることを基本とする。
・案内間隔はできる限り短くすることが望ましい。

音声案内の案内文標準例
標準パターン
「{行き先}{上下方向}エスカレーターです」

コンコースからホームへ向かうエスカレーター
・行き先ホームの路線名などを案内する。また全ての路線名を案内することが煩雑となる場合は番線名を案内す
る。

環状線下町方面ホーム行き下りエスカレーターです」
環状線ホーム行き下りエスカレーターです」
「山手方面ホーム行き上りエスカレーターです」
「港湾線みなとまち方面、環状線山手方面ホーム行き上りエスカレーターです」
「5番線・6番線ホーム行き上りエスカレーターです」

ホームからコンコースへ向かうエスカレーター
・行き先となるコンコースから最寄の主要な改札口を行き先として案内する。
「南口改札方面下りエスカレーターです」
「東口・北口改札方面上りエスカレーターです」
「南口・市営地下鉄乗換改札方面下りエスカレーターです」

通路上途中経路に設置されたエスカレーター
・乗車動線上であれば、「乗り場方面行き」、降車動線であれば「改札口方面行き」を目安として案内を行う。
環状線乗り場方面下りエスカレーターです」
「乗り場方面下りエスカレーターです」
「南口改札方面下りエスカレーターです」


 視覚障害者用付加装置(交通交差点におけるいわゆる音響信号機)の案内音(音響規格等詳細は警察庁交通局
「音響式視覚障害者用交通信号付加装置仕様書」を参照)とは区別する。
(具体的な音響づくりについては、参考2-29に示す「音案内を行う際の基礎知識」を参照)


参考2-29:音案内を行う際の基礎知識
ここでは、各場所で音案内を設置する際に、全般的に考慮が求められる視覚障害者の特性、音の性質、音量選択
の考え方、案内範囲の考え方などを示している。
なお、ここで示した技術仕様は、2013年度発効予定のJIS T0902「高齢者・障害者配慮設計指針―公共空間に設
置する移動支援用音案内」と整合している。本文中、*印で示した仕様は、このJISで定めた要求推奨事項である
。また、音声以外の可聴音を使用した音案内について、本ガイドラインでは「音響案内」という用語を使用して
いるが、本JISでは「非音声音案内」という用語を定義している。ここでは「音響(非音声音)案内」と併記す
る。

(1)視覚障害者の音利用特性

1)視覚障害者の聴覚による環境認知の基礎
音情報は、視覚障害者にとって歩行中の周囲の様子を知るために非常に重要である。
視覚障害者の歩行における聴覚の基本的役割は、車両などの音を発している物体の位置を知る(これを「音源定
位」という)だけではなく、壁や柱などの音を発していない構造の位置を反射音などを手がかりに知る(これを
「障害物知覚」という)役割も担っている。また、室内の残響の様子などを手がかりに施設の広さや構造を知る
役割も果たしている。
一般に視覚障害者は晴眼者に比べて音に敏感であるなどと言われているが、決して視覚障害者が特殊な聴覚を有
しているわけではない。上述した聴覚による環境認知の技能は、あくまで訓練や学習によって獲得されたもので
ある。獲得の度合いには個人差があり、一般に中途失明者より先天盲のほうが聴覚による環境認知を高度に修得
している。また、中途失明者でも、若い時期に訓練や学習を積む機会があった者ほどしっかり修得している傾向
にある。
視覚障害者の歩行における聴覚の役割は、視覚障害者の歩行訓練(Orientation & Mobility)の理論の中である
程度体系づけられている。音案内による視覚障害者の誘導を考える際には、必ずその役割を理解した上で、その
役割を妨害せずに必要に応じて不足している部分を補うような音響設計を心掛けなければならない。

2)ランドマークとしての音案内の必要性
晴眼者にとっては「雑音」でしかない音情報が、視覚障害者にとっては「ランドマーク」となっていることが多
い。例えば、釣り銭の音で券売機の位置が分かったり、かつての改札のハサミの音が改札口の位置を知る手がか
りとなったり、水の音がトイレの位置を知らせていたり、中から聞こえてくる話声で男子トイレか女子トイレか
を判断できたりする。また、雑踏の流れによって通路の方向が分かったり、壁からの反射音の変化によって壁の
開口部分(つまり施設の出入口)が分かったりする。
しかしながら、これらの音情報は不確定なものであり、状況によっては利用できない場合がある。また、施設内
に不必要に大きい騒音や音楽(BGM)が存在する場合は音情報そのものが利用できなくなることがある。さらに
は、風の強い場所などでは、風の音や気流の影響により音情報が確認しにくくなることもある。

上述のことを踏まえ、視覚障害者が確実に音情報を利用できるようにするためには、不必要な騒音や音楽(BGM
)を排除した上で、確定的な音情報を人工的に配置することが望ましい。

(2)音による案内の考え方 ? 音の性質 ?

1)音案内に適した周波数や音色の考え方
人間の可聴域は20Hz〜20kHzと言われている。最も感度が高いのは4kHz付近である。なお、通常人間の音声の重
要な部分は、ほとんどが5kHz以下の周波数帯域に含まれている。
生活環境に存在する騒音が低周波数優位な雑音であることを考えると、高い周波数の音のほうが環境騒音中では
注意を引き、聞き取りやすい。しかし、加齢による聴覚機能の減退を考えると、高齢になるほど低い周波数音の
ほうが聞き取りやすい。両者を考慮すると、音案内として使用する周波数帯域は、基本周波数(その音の一番低
い周波数成分)が100Hz〜1kHzの範囲にあることが必要である*。なお、人間の音声は、男声が100〜150Hz、女
声が200〜300Hz、また現在実用化されているチャイムは770Hzと640Hzが使用されており、それぞれ基本周波数の
必要条件を満たしている。
また、使用する音は、音源定位の正確さを確保するために、なるべくその周波数帯域(その音を構成する周波数
成分の存在する周波数範囲)内にできるだけ多くの周波数成分をもつ音を使用する必要があり*、かつ最高周波
数は8kHz以上である必要がある*。純音(単一周波数の音)や狭帯域音は使用してはならない。なお、現在実用
化されている音案内(音声・チャイム共)は、最高周波数が約5〜8kHzの範囲となっており、全てが理想的とは
言えず今後改善が必要である。
上記のことを踏まえ、具体的な音響(非音声音)案内を設定する際には、以下のことに配慮すると、暗騒音や残
響中での音源定位により有効となる。

純音(単一周波数の音)は不可とし、広い周波数帯域をもつ音を用いる。最低周波数は100Hz?1kHz、最高周波数
は8kHz以上とする必要がある*。また、その周波数帯域内にできるだけ多くの成分を持つ複合音とすることが望
ましい*。多くの倍音(その音の基本周波数の整数倍の周波数の音)を含んだ音は利用者にとって音源定位がし
やすい音となる。なお、倍音成分を間引き(例えば偶数倍音や高周波成分を削除)するなどして心地よい音色を
デザインするケースがあるが、この種類の音は音源定位の性能を確保するために大音量で出力する必要があり、
かえって不快感を増す結果となるので好ましくない。
音の時間長さは、5秒以下とすることが望ましい*。短い時間長さの音を繰り返すほうが、音の立ち上がりが頻
繁に発生するので音源定位がしやすい案内となる。
定常音(単一の音色が継続的に流れる音)や単調に減衰する音を使用しても構わないが、もし可能なら周波数ゆ
らぎ(注1)や振幅ゆらぎ(注2)を持たせることが望ましい*。
音の立ち上がりは、0.005秒以下の急峻なものとする*。
鳥の鳴き声を模した音響(非音声音)などの「自然現象などから類推できる音」については、実在する自然音と
区別できる音にしなければならない*。このため、実際に自然の音を録音したものをそのまま用いることは好ま
しくない。
音の繰り返し頻度は、案内音と次の案内音との間の無音時に利用者が通過してしまうことがないように、無音時
間を原則2秒以下にすることが望ましい*。ただし、周辺の利用者、住民、および施設職員に不快感をもたらさ
ないことにも配慮して無音時間を決めるものとする。
スピーカは、前述の周波数帯域を再生することが可能な周波数特性をもつものを用いる*。デジタル再生の場合
、分解能は8bit以上が必要であり、可能なら16bit以上を用いることが望ましい*。
(注1)周波数ゆらぎ・・・案内音のサイクルの中で、周波数の組み合わせが一定ではなく、多様な周波数の組み
合わせが用いられていること
(注2)振幅ゆらぎ・・・案内音のサイクルの中で、一定の振幅で推移するのではなく、多様な振幅を持っている
こと

2)音量選択の目安
音案内は視覚障害者にとって重要な情報源である反面、それを必要としない人にとっては騒音に過ぎないことを
留意したい。音案内は必要最低限に留めることが重要である。
音のうるささや音による不快感は単純に物理的な音量だけで決まるわけではないが、環境基準では一応の騒音レ
ベルの上限が設けられている。これによると、商工業住居併用地域における騒音は、昼間60dB以下、夜間50dB以
下でなければならないとされている(騒音レベルの数値の例は下表1参照)。住居用の地域、及び療養施設、社
福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域では、さらにこれより低い上限が設けられて
いる(詳しくは表2参照)。旅客施設内でこの基準を満たすことは難しいが、施設周辺の住宅街などに対しては
、音による案内もこの環境基準を満たすことが望まれる。また、基準を満たすだけではなく、周辺住民や近隣で
働く人に不快感を与えないよう設定する必要がある。

表1 騒音レベルの数値の例
120 dB ジェットエンジンの音
100 dB 電車通過時のガード下
90 dB  地下鉄車内
80 dB  騒々しい街頭
60 dB  会話の音声
50 dB  静かな住宅街の昼
40 dB  図書館
30 dB  静かな住宅街の夜
0 dB  最小可聴限

表2 環境基準
療養施設、社会福祉施設等地域
 昼間50 dB以下 夜間40 dB以下
住居地域
昼間55 dB以下 夜間45 dB以下
商工業住居併用地域
昼間60 dB以下 夜間50 dB以下

音案内の音量は、騒音公害の観点からはなるべく小さいことが望ましいが、その反面、周囲の環境騒音にマスク
されずに正しく聞き取れるだけの大きさは確保する必要がある。基本的には、音案内の音圧レベルは、暗騒音の
音圧レベルに対して約10dB以上大きいことが必要である*。周囲の環境騒音の騒音レベルは時間帯や曜日によっ
て変化するので、音案内の音量(できれば周囲の騒音に合わせた各周波数成分毎のレベル)もこれに応じて過不
足なく調整されることが望ましい。音量調整の具体的方法は、音案内を設置する施設や周辺の音環境の特性に応
じて案内音の明瞭性を確保しつつ、かつ周辺住民や近隣で働く人とよく協議した上で周囲の迷惑とならないよう
決定することが必要であろう。

3)音の案内範囲の考え方 ―減衰特性と指向性の考慮―
音案内は、案内が必要な場所にのみ行うことが理想である。不必要な場所での案内は視覚障害者にとってもただ
の騒音となってしまうばかりか、誤った場所案内をしてしまう可能性があるので注意が必要である。
音案内は通常、スピーカーから音を発して行う。原則として、スピーカーの音の放射方向は、利用者の主要な動
線の方向を向けることとする*。現在実用化されている音案内機器の中には、施工や外観の都合上、天井や壁に
スピーカーを埋め込んで、天井から真下に音を放射したり、壁に垂直に音を放射するものがある。これらは利用
者の動線とは関係のない方向に音を放射しているため好ましくなく、今後改善が必要である。
通常のスピーカーから発せられた音は、一般に距離の二乗に反比例して減衰する特性を持つ。遠くまで案内音を
届かせようとすると、スピーカーの近隣がうるさくなってしまうので、減衰特性がより緩慢なスピーカー(例え
ば線音源スピーカーや面音源スピーカーなど)を用いるとよい。
また、通常のスピーカーは広い指向性を持っているので、案内が不要な方向にまで及ぶ場合がある。特定の方向
にのみ案内を行う場合には、狭指向性スピーカーを利用することができる。半径2〜3mの近距離範囲にのみ案内
を行いたい場合は、通常スピーカーを小音量で用いるか、または狭指向性スピーカーを使用して案内範囲を限定
し、不必要に案内音が広範囲に届かないようにする。
スピーカーを設置する高さについては、施設の位置を知らせる観点からは、利用者がアクセスしようとしている
対象の位置から音が発せられていることが理想的である。スピーカー設置高さによる特性としては、天井など高
過ぎる位置への取り付けは、音の水平方向が分かりにくくなる問題があり、また残響が大きくなる問題もあるた
め好ましくない。また逆に、床など低い位置にスピーカーを取り付けると混雑時に音源が人の陰に隠れて音案内
が不明瞭になる可能性があり、混雑しやすい施設では音案内の明瞭性を十分に検証して取り付ける必要がある。
なお、中程度の高さ(1〜2m)では、耳に近い高さとなるため通過時に利用者が大音量を聞かされる可能性があ
るため、好ましくない。原則として、スピーカーの設置高さは、0.8m以下、または2?3mの範囲である*。
現在一般に、広い範囲まで案内を行う場合は、床から2〜3mくらいの高さにスピーカーが配置されていることが
多いようであるが、低い位置に設置されているアクセス対象(例えばエスカレーターなど)の位置関係が掴みに
くい欠点がある。今後は可能な限り、アクセス対象と同位置にスピーカーを取り付けることが望ましい。

4)音案内による利害
音案内は、施設利用者、特に視覚に障害を持つ利用者を対象として行われるものであるが、一方で、音案内を必
要としない人にとっては騒音となってしまう可能性があるので注意したい。特に施設の職員など、長時間同じ場
所で同じ案内を聞くこととなる人にとっては苦痛となることに留意しなければならない。このようなことを避け
るため、不必要な音を避け、先述した音の案内範囲の考え方を踏まえて、音案内を設置することが必要となる。

(3)音案内設置上の配慮事項

上記の「音案内を行う際の基礎知識」を踏まえ、本ガイドラインで示されている音案内の設置においては以下の
点に配慮する必要がある。また、これらは、公共交通事業者等が、本ガイドラインを超える内容の音案内を設置
する際にも十分な配慮が求められる事項である。

・音響(非音声音)案内については、多くの音色を設定しない。本ガイドラインにおいて音響(非音声音)案内
の標準例を示しているのでこれを遵守すること。また、本ガイドラインで定めた以外の方法で音案内を使用する
と利用者が混乱するため、極力避けること。さらに、音案内を実施している場所では、騒音や音楽(BGM)など
音案内以外の音を極力抑えること。
・隣り合う施設(例えば階段と改札口)に同一音の音響(非音声音)案内を設置しない*。
・案内音の音量設定にあたっては、音案内設置場所の空間特性を考慮し、環境騒音や残響の中でも聞き取れる音
量を確保することが望ましい。原則として、環境騒音に対し約10dB以上を確保する*。
・音源となるスピーカーの向きは、旅客動線上の案内が必要とされる方向に向け*、また、特定方向のみに案内
を行う場合は狭指向性スピーカーを利用することが望ましい。
・音源となるスピーカーの設置高さは、原則0.8m以下または2?3mの範囲*とし、エスカレーターなどのアクセス
対象と同位置にスピーカーを取り付けることが望ましい。
視覚障害者が音源を特定しやすいよう、可能な限り連続的に案内することが望ましい。音案内の繰返し頻度は
、音から次の音までの無音時間2秒以下が原則である*。
視覚障害者が僅かな音響的手がかりにも注意を払って生活していることを踏まえ、音案内を設置し音量を調整
する段階においては、最初から必要以上に大音量を出力しないことが望ましい。

(4)音響(非音声音)案内標準例の選定にあたって


1. 音案内の必要性
音案内の必要性と提供対象
われわれは視覚、聴覚などを通して日常的に様々な情報を取り入れている。特に視覚障害者にとって、音の情報
は安全で円滑な移動のために重要である。もちろん、視覚障害者の移動支援(主にオリエンテーション情報)を
提供する主要な手段は音案内単独だけではなく触覚表示(視覚障害者誘導用ブロック点字表示など)等との組
み合わせによって実現されるものである。

図1 音案内の提供対象の整理

音案内は視覚障害者を主な対象として設置されるが、視覚障害者以外の利用者の移動に対してもメリットがある
と考えられる(図1)。特に今後増加する高齢者にとって、複雑化、多様化する経路の案内や誘導には音案内が
有効な支援方法の一つとなると考えられる。そのような観点からも、音案内の設置に際しては多様な人が共通し
てそれを活用できる配慮が必要である。

(2)移動の際に役に立つ音
現状の旅客施設で移動の手がかりとして役に立つ音は、主に以下の二つが考えられる。
一つは、本整備ガイドラインで従来から提示している設備の位置や注意を促すための意図的に作り出された音、
適切に提供されている自動放送が挙げられる。これらの音はいずれも、音源方向の定位(どこから音が出ている
か判断できる)が旅客の誘導に役立ち、音量や設置位置が決まっているため常に安定した移動の手がかりとなる。
もう一つは、鉄道駅であれば列車の走行音、ドアの開閉音、旅客の足音など自然に発生する音であり、環境の状
態の把握に役立つものである。音が持つ記号としての意味内容が様々な状況判断に有用であるが、これらの音は
常に安定した質を持つものでないため二次的な手がかりとして活用される。

(3)音案内の妨げになる音
音案内を妨げてしまう環境中の音は、主に以下の三つが挙げられる。
一つ目は、旅客施設内外の不適切な案内放送で、例えば過剰に繰り返される放送、音量の大きすぎる放送、音質
の悪い放送で、音案内と無関係に長く鳴り続ける音挙げられる。さらに周辺騒音、暗騒音と言われる、商業施設
等で流す販売案内放送、BGMなどの誘導案内とは無関係の意図的に作り出された音である。
二つ目は、建築施設の壁面、天井などの材質や構造によって発生する反射音・残響音である。
三つ目は、複数の案内音などが重なることによる影響で、例えば近い周波数帯の音や類似する音が重なることで
所定の音案内として聞こえなくなる現象、2つの音が同時に発生した場合に、長い方の音や大きい方の音が他方
の音をかき消すマスキング効果等である。

(4)実態把握の必要性
音案内の有効性が損なわれるような状況を認識したうえで、利用者の立場に立った音案内の必要性を整理する必
要がある。
すなわち旅客施設の特性と主要な移動経路を想定した場合、利用者にとって音案内が必要な場所・場面、視覚障
害者誘導用ブロックや点字・触知図等の触覚と音の両面で対応すべき箇所などの整理が必要である。特に既設の
音案内設備における効果の検証は重要である。
こうした利用者ニーズからみた音案内の有効性に関する実態把握は、現状の音案内の提供実態や音案内を妨げる
要因の有無の確認を可能にし、音案内の適切性向上を意図した設備施工、運用後の評価、さらに環境改善に資す
るものである。

2.音案内を整備する上での留意事項と着眼点
(1)重要な3つの視点と5つのキーワード
音案内を考える上で「旅客の行動に合わせた適切な音案内」(文脈)、「音の伝えるべき情報と性能」(内容)
、「音案内を行う環境の整備」(音環境)の3つの視点を合わせて考える必要がある。
視点1:旅客の行動に合わせた適切な音案内(文脈:context)
移動する人に系統的に必要な情報を伝えるために、音案内が途絶せず連続して提供されること、すなわち”利用
文脈(利用の流れ)を考慮した適切な設置”が重要である。途絶には装置の配置による装置間途絶と内容伝達の
途絶の二面が考えられるが、必ずしも常に音が聞こえる状態が必須というわけではなく、実際は、視覚障害者誘
導用ブロックなど触覚的設備との連動によって途絶を軽減したり、回避されていることも多い。
また、具体的な例では、利用者が頼りにしている自動放送を遮断してしまう手動放送(例えば、自動放送中の係
員によるマイクの案内)、他の音源が別の音をかき消してしまう問題などへの対応が求められる。
視点2:音の伝えるべき情報と性能(内容:contents)
音声(言語)音・非音声音の役割分担、注意喚起と具体的な意味内容の伝達、音源定位(音の発生位置を特定す
る)、旅客の静止時・移動時の聞き取り状況等々を考慮した音の性能基準を考慮する必要がある。すなわち、多
義性(1種類の音で複数の意味を持つこと)のある音の誤った場所での使用の回避、伝える内容に適した音の選
択など、特に、音の質や種類の適切性を踏まえ、個々の音源を調整・制御する需要と必要性が今後は高まってく
る。
視点3:音案内を行う環境の整備(音環境:circumstance)
音案内を行う環境の整備として、”音の総量規制”という概念が必要である。音の総量規制とは、すなわち音案
内の背景にある必要性の低い音を制御することであり、空間における音の必要性や発生源をふまえ、全体として
の情報量や音量を整理整頓(複数の音が同時に流れて聞き取れない、音が大きすぎてうるさいということを減ら
す)して、案内したい音が的確に伝わる環境を整えることである。
このために、周辺騒音、暗騒音を下げるための遮音・吸音対策、さらに反射・残響が発生しないような空間づく
りが必要であり、特に地下等の遮蔽空間では重要である。そのためには、必要に応じて商業施設等への協力依頼
を行うことも考慮する。
一方でどういう環境の時にどういう音の出し方が良いか、空間の複雑さ等に対応した目標値の整理などが今後の
研究に求められている。

また、音案内自体については?「統一性」、?「類推性」、?「印象の等価性」、?「了解性」、?「非騒音性
」の5つのキーワードが挙げられる。それぞれの意味を以下に示す。
?統一性:設置者、施設が異なる場合でも、同じルールに基づいた音案内が用いられていること。
?類推性:自然現象などとの類似性によって意味を推測しやすくなっていること。また、従来からの普及によっ
て音と事象の関連が推測されやすくなっていること。
?印象の等価性:音自体の物理的特性によって生じるイメージが音サインの意味と大きく相反しないこと。すな
わち、危険を伝える音は危険らしさを感じさせるようにする、垂直移動で上下どちらに向かう経路かを音高の変
化で示すような例。
?了解性:確実に聞き取ることができ、意味の解釈を誤らないような状態であること。すなわち、明瞭度が十分
あり、意味も周知されている状態であること。
?非騒音性:音案内がうるさく感じられてしまうことがないように設定されていること。
?〜?については音案内を活用する人にとっての配慮として重要であり、?はさらに音案内を直接活用しない周
囲の人への配慮も含むものである。
これらの視点とキーワードの関係性(図2)を意識して計画することが重要である。

図2 音案内における3つの視点と5つのキーワード

(2)施設規模に応じた音案内の必要性
先にも述べたとおり、地域性や旅客施設の各々の音環境の違いに着目した、環境別対応という考え方が必要にな
る。施設内及び周辺の騒音の大きさ、騒音発生の頻度、音の反射などの相違から環境を大きく区分けして考え、
今までは音案内自体の音量(増大)による対処が主であったが、騒音など音案内以外の音をコントロールする(
下げる)対処や案内音の指向性制御の考え方が必要とされてくる。特に、大規模旅客施設で、案内すべき施設が
多数存在する場合や暗騒音レベルが終日高い場合などに、音量を大きくしすぎるなどの対応で、結果的に案内の
有効性を向上させないまま騒音の大きな状態の環境をつくり出してしまうなど、誤った整備を行わないようにす
る必要がある。

3.音案内の整備のあり方と方向性
音案内を実施する際は、上記の内容を考慮し以下の手順に沿って行うことが望ましい。
(1)音案内を整備する際の原則
?トータルな立場からのデザイン
・個別の装置に取り付けられている音(報知音、操作音など)、異なる施設から発せられる音を把握し、その場
所での音全体を制御することを考える
?音案内を行う環境の整備
・その場所での音を一定の音量以上に大きくしないなど、背景音の制御という考え方に基づき不要な音の削減・
暗騒音レベルの低減化を図る
?規定以外の使用方法で音案内を用いない
・例えば改札口や地下鉄出入り口以外の場所で「ピンポン」音を使用しないなど

(2)音案内を整備する際の計画
?音案内の系統的配置
・旅客施設の中で音案内が必要な場所を系統的に特定する
?意味伝達性の保障
・適正な案内内容、適正な音の特性を確認する
?過度な設備の回避
・複数の音源が近接して設置されるなどの過度な設備を原因とする音の輻輳によるわかりにくさを回避する
?他の案内方法との機能分担、協働の整理
・必要に応じて触知による案内・誘導(視覚障害者誘導用ブロック等)の活用を図る
・設備面だけで全て対応できない場合があることを理解し、その際は人的支援による補完を考慮する

(3)個別の音案内の性能、整備水準
?個別音源の調整
2013年度発効予定のJIS T0902「高齢者・障害者配慮設計指針−公共空間に設置する移動支援用音案内」参照
?個別の音源が相互連動性をもって機能すること

(4)整備効果の評価検証の留意点
?音案内の周知
・どのような音がどのような意味で用いられているかということを視覚障害者当事者だけでなく、音案内が有効
と考えられる利用者に広く周知されるよう配慮する
?案内の整備効果の評価検証手順
・個別の音の音響的特性については、2013年度発効予定のJIS T0902に則り評価する
・利用の文脈の中での案内の適切性、個別の音の内容の適切性を利用者並びに専門家の支援を得て検証し、整備
後の定期的な評価(少なくとも5年に1度程度)を行い必要に応じた修正を行うと共に、可能であれば施設の改修
なども視野に入れる

(5)その他の課題
施設側の適切な音案内設備拡充のほか、携帯電話(スマートフォン)等の通信機器を用いた情報提供手段の可能
性についても今後検討していく必要がある。また、予期できない音に対して対応しきれない利用者もおり、今後
、コントロールされた音環境下で、さらに多くの人が不快を感じない音案内の提供方法の検討が必要である。

音声案内装置
◇触知案内図等に、スピーカーを内蔵し押しボタンによって作動する音声案内装置を設置することが望ましい。
◇この装置を設置する場合、対面して操作する利用者の「前、後、左、右」などわかりやすい言葉を用いて、簡
単明瞭に施設等の方向を指示することが望ましい。

音響案内装置
◇触知案内図等の位置を知らせるよう音響案内装置を設置することが望ましい。この場合、改札口、プラットホ
ーム上の階段、地下駅地上出入口における音響案内とは異なるものを採用するものとする。

◇上記券売機には、操作可能なすべてのボタン、投入・取出口を示す点字を併記することが望ましい。
点字の表示位置については、JIS T0921(縦方向に並ぶ操作ボタンの場合はその左側、横方向に並ぶボタンは
その上側(スペース上やむを得ない場合は除く。))にあわせたものとする。
◇線状ブロックで誘導しない券売機についても、上記同様に点字を併記することが望ましい。
◇複数社の乗り入れ区間では、乗り換えボタンなどにも点字を併記することが望ましい。
点字は、はがれにくいものとする。

?緊急時の案内用設備
考え方
緊急時に高齢者、障害者等が円滑に移動及び避難等ができるよう、消防関係法令や各都道府県等の条例に基づい
て施設等の整備を行う。

ガイドライン
◎:移動等円滑化基準に基づく整備内容、○:標準的な整備内容、◇:望ましい整備内容

誘導標識
◇停電時などを考慮して、主要通路に蓄光式誘導標識を敷設する。(JIS Z9095参照)ただし、消防法その他の
法令の規定により停電時などを考慮した誘導案内方法が整備されている場合はこの限りでない。

緊急時の案内設備
視覚障害者や聴覚障害者にも配慮し、緊急事態の情報を音声・文字表示によって提供できる設備を備えること
が望ましい。

参考2-30 蓄光式誘導標識(JIS Z 9095)
・このJIS規格は、旅客施設を含む公共施設、商業施設、地下街等の建物内の照明及び誘導灯が停電などで使用
できない場合に使用できる蓄光式の避難誘導システムについて規定されたものである。蓄光式の誘導案内は、誘
導灯及び誘導標識に代わって設置されるものではなく、それらに加えて設置される。
・基本原則として、以下の事項が明記されている。
・視覚的に連続した視認性の高い誘導ラインを建物内から避難路の最終地点まで引いて避難路の境界線と完全に
一致させなければならないこと
・設置場所、掲示の高さ、視覚的強化(ラインを太くする、ラインを増やす等)はリスク評価に基づいて決定し
なければならないこと
蓄光式の安全標識の色、形状、図記号は、JIS Z9101,JIS Z9103,JIS Z8210 及び ISO 7010 によるものとす
ること
・また、蓄光式の安全標識、誘導ラインなどは少なくとも 60 分間の使用時間中、明瞭に見えなければならない
ことが明記されている。
3.施設・設備に関するガイドライン


器具等の形状・色・配置
視覚障害者や肢体不自由な人等の使用に配慮し、紙巻器、便器洗浄ボタン、呼出しボタンの形状、色、配置に
ついてはJIS S0026にあわせたものとする。

緊急時通報
視覚障害者や聴覚障害者にも配慮し、緊急事態の情報を音声及び光によって提供できる設備(フラッシュライ
ト等)を備えることが望ましい。
◇フラッシュライト等を設置する場合には、便房内の扉等にフラッシュライトの点滅が緊急事態を表す旨を表示
することが望ましい。
◇フラッシュライト等は、便房の扉を閉じた状態で、すべての便房内からその点滅が十分識別できる位置に設置
することが望ましい。

ボタンの高さは、目の不自由な人が触覚で認知しやすいよう、ボタン部を周辺部より突起させることが望ましい。

<操作部の色及び輝度コントラスト>
ボタンの色:操作部の色は、相互に識別しやすい色の組み合わせとする。JIS S0033に規定する“非常に識別し
やすい色の組み合わせ”から選定することが望ましい。例えば、便器洗浄ボタンの色を無彩色又は寒色系とし、
呼出しボタンの色を暖色系とすることが望ましい。
ボタン色と周辺色の輝度コントラスト:操作部は、ボタン色と周辺色との輝度コントラストを確保する。また、
ロービジョン者及び加齢による黄色変化視界の高齢者も判別しやすいよう、明度差及び輝度比にも留意する。

音声案内
◇便房内の設備の配置がわかるように、音声案内を設けることが望ましい。


呼出しボタン(通報装置)
○呼出しボタンは、便器に腰掛けた状態、車椅子から便器に移乗しない状態、床に転倒した状態のいずれからも
操作できるように設置する。音、光等で押したことが確認できる機能を付与する。

器具等の形状・色・配置
視覚障害者や肢体不自由な人等の使用に配慮し、紙巻器、便器洗浄ボタン、呼出しボタンの形状、色、配置に
ついてはJIS S0026にあわせたものとする。

参考3-9:多機能トイレの例1(標準的なプラン)


視覚障害者の誘導
○カウンターの1か所に視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。


◇タッチパネル式の表示画面・操作画面及びボタン表示の配色については、参考2-5を参考とした色使い、色の
組み合わせとし、色覚異常の人の利用に配慮することが望ましい。
◇タッチパネル式の表示画面・操作画面の文字はゴシック体で、できる限り大きな表示とすることが望ましい。
◇表示画面・操作画面は、外光・照明の反射により、見にくくならないよう配慮することが望ましい。

ボタン
点字ボタンの料金表示は、周辺との色の明度、色相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を大きくする等して
ロービジョン者の利用に配慮することが望ましい。

テンキー
○タッチパネル式の場合は、点字表示付きのテンキーを設置する。
○テンキーを設置した券売機には音声案内を設置する。
◇機器メーカーと共同して統一化を図ることが望ましい。

*:移動等円滑化基準では「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認性
を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を行
うこととした。

「?視覚障害者誘導案内用設備 ■音声・音響案内」参照

コミュニケーション
無人駅・無人改札口においては、視覚障害者、聴覚障害者等からの問い合わせに対応できるよう措置を講ずる。

列車接近の警告・案内
◎音声による案内で、列車の接近を警告する。ただし、電気設備がない場合その他技術上の理由によりやむを得
ない場合は、この限りでない。


プラットホーム上の柱の識別
○ロービジョン者が柱を認識できるよう、柱の色あるいは柱の下端部の色はプラットホーム床面と色の明度、色
相又は彩度の差(輝度コントラスト*)を確保する。

照明設備
◎プラットホームには照明設備を設ける。
○プラットホームの両端部まで、高齢者やロービジョン者等の円滑な乗降のため、採光や照度に配慮して照明設
備を設置する。

階段の音響案内
「?視覚障害者誘導案内用設備 ■音声・音響案内」参照

音声・音響計画
◇指向性スピーカー等の活用により、音声・音響案内、案内放送の輻輳を避けた音声・音響計画を実施すること
が望ましい。
*:移動等円滑化基準では、「色の明度、色相又は彩度の差」であるが、コントラスト(誘導ブロック等の視認
性を得るための周囲との見えやすさの対比)確保のためのより有効な指標として「輝度コントラスト」の記述を
行うこととした。


福岡市営地下鉄七隈線では、対向壁ならびに可動式ホーム柵の内壁において、車両窓に対応して駅名標が配置
されている。車両窓と駅名標の位置をあわせ、車内から駅名が確認しやすい配慮がある。
・車両内から可動式ホーム柵内側に表示された駅名標が確認できる(左写真)。

以下、各交通機関に関して同様な観点で述べられているため省略します。






















































































◎高さ75cm以内ごとに長さ150cm以上の踊り場を設置
◇屋外は高さ60cm以内ごとに長さ150cm以上の踊り場を設置






























離れた箇所

(音によるものを除く)


















の踏み段





便房の奥行き





便房の内法幅
○90cm以上

出入口の有効幅
○90cm以上









○側面に壁がない場合は、立ち上がり部に35cm以上の幅木状の車いす当たりを連続して設ける




<側面から入る場合?>