貧困の中での心の潤いを見つけた人々

きょうの潮流 2013年8月31日(土)

先日、南米からやってきた子どもたちのオーケストラが
米ワシントンで初公演を行い喝采を浴びました。パラグ
アイ最大のごみ処理施設がある町カテウラの楽団です▼
観客が驚いたのは演奏レベルの高さだけではありません
。子どもたちの楽器が全てごみで作られていたからです
。たとえば、チェロは食料油用の20リットル缶、ブラ
シの柄などを組み合わせたもの。そのチェロを弾いた少
年は「伝統的なチェロと見た目が違うが、演奏には支障
ないよ」と笑顔を見せました▼楽団を率いるのはアルゼ
ンチン出身の音楽家ファビオ・チャベスさん。ごみの山
から金目のものを拾って生活するカテウラの子どもたち
が、将来への希望を失い麻薬や犯罪組織に取り込まれる
状況を音楽の力で変えたいと、楽器作りと演奏を指導、
「カテウラ・リサイクル楽器楽団」を創設しました▼本
物のバイオリンを買う金があれば家が建てられるといわ
れる貧しいカテウラ。最初は無関心だったおとなたちも
、楽器の材料になるガラクタを持ち寄るなど協力と理解
が広がっていきました。チャベスさんは、「達成したい
という強い気持ちがあれば、希望はかなえられる」と語
ります▼住民の意識も変化しました。「ゴミを簡単に捨
てず、ものを大事にするようになった」「人間だって簡
単に捨ててはだめなんだと理解するようになった」とい
います▼もうけ最優先で労働者を使い捨てにし、若者か
ら希望を奪う、どこかの国の“ブラック企業”経営者に
ぜひ聞かせたい言葉です。