ばん茶せん茶への投稿です

朝子せんせ
「人間の壁」(石川達三著)を再読しました。
戦前からの「綴り方教育」を継承しながら戦後の民主教
育を情熱と信念を持って、撃ちたてようとする普通の先
生達の物語です。
佐賀県の教職員組合の休暇闘争を通して、ある女教師が
、子ども達が自分で考え、
共に民主的な社会を担える人物に育って欲しいと願いつ
つ、
貧困や権力からの圧力に負けないで教育という仕事に目
覚めて行くのです。
読んでいて小学校の5,6年生の時の担任の朝子先生を
思い出していました。
朝子せんせは、どっしりした笑顔と、いつも、うわっぱ
りとずぼんをはいていました。
当時、私たち子どもは、遊びも勉強も強制されたものだ
とは思っていませんでした。
みんな、自分達で考え出してやっていたとずっと思って
いました。
しかし、思い起こすと、
ドッジボール、縄跳び、雪合戦、古い木造校舎の掃除、
ボットントイレの窓拭き、グループで大きな用紙に描い
た風景画、
特別編成の合唱隊の隣町へ遠征(歌った歌は「雲を呼べ
ば」でした)、遠足でリュックサックを背負って稲を乾
燥させた匂いやバッタの跳ねとぶ田んぼ路での道草をし
たりしても、
いつも、いつも朝子せんせは笑顔で見守っていたっけ。
私達悪がきどもが、放課後でも休日でも安心して行動で
きたのは、並々ならない先生達の努力の賜物だったので
した。
それから数十年、私達は平和と民主主義を愛し、真理を
探求しつつ大人となり、今では前期高齢者になってしま
いました。
ふつつかながらも、私は民主教育の申し子として、女教
師として、母親として子ども達を愛し、育ててきました。
そして今日に至って「人間の壁」が描かれた時代に戻り
つつある事を身にしみて感じるようになりました。
教育勅語など知らない私達の世代が育てた現代の世代、
もっと若い世代に
「一人一人の人権」を護って行きましょうね」(憲法
三条)と、しっかり子ども達に教えて下さいと、
引退した身として、願うばかりです。

小田嶋保子  66歳 無職
花巻市 下幅 4−10
郵 025−0063   電  0128−24−5
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