ばん茶 せん茶への投稿です
風呂場の光景
自分の年齢も考えずに、私は、国会前の抗議集会に、四月からずっと通いつづけた。
疲労がたまり、温泉で、休養する事にした。
「はい、はい」と言う元気な声が、休んでいる部屋の外から、聞こえてきた。
スポーツ競技大会で宿泊する、子供達の集団の到来であった。
大抵の客は、彼らの騒々しさを、避けて、風呂から、早々にあがって「逃げるが勝ち」とばかり、姿を消す。
高齢者と十台では、エネルギーに、差が、ありすぎるからだ。
私も、彼女達が来る前に、体を洗っておこうと風呂場に入った。
時、既に遅し。洗髪中に、数名が入ってきた。
テレビでも聴いているような、出所不明な言葉使いで、轟くばかりの大声で、熱いの何のと、大騒ぎが、始まった。
幸い、私は、そんな子達が大好きである。
シャンプーしながら、隣にいる子に、声をかけた。
中学生かと思ったら、高校三年生であった。
「風呂場は、声、響くし、特に、あちらの風呂に入る時は、気を付けてね。皆にも、伝えてね」と、優しく話しかけた。
それから、私は、自分の体を洗い、その風呂に入った。
とても静かで、気持がよかった。
風呂からあがると、彼女達も、あがっていた。
「あれっ?あっちの風呂に、入らなかったの?」と訊くと、「入りましたー」と元気に応えてくれた。
しかし、全盲の私2は、彼女達が、入った気配は、感じられなかった。
風呂場で隣にいた子を呼んで、「皆に、話してくれたのねー!ちっとも、気付かなかったわよ。偉いわねー、ありがとう。」と、
彼女を褒めて、握手して、にこやかに別れた。
やがて、二階から、ドタンバタンと、エネルギー溢れる楽しげな音が聞こえて来た。
「今どきの若者は」と、けいえんしがちだが、
裸の付き合いをしてみると案外そうでもなく、「道理」は、共感しあえるのだった。
どうやら、互いに「食わず嫌いなのかもしれないなー」と、
未来が、少しばかり、明るくなったような、気がした。
小田嶋保子 63歳 無職
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